皆さん、こんにちは。
ウィスコンシン州で馬と生活している、ゆうこです。
先日、山梨県の乗馬施設で「4歳女児がエサやり体験で馬に指をかみ切られる」という痛ましい事故のニュースを見ました。
このニュースを読んで、私も以前馬に噛まれたことを思い出しました。もう10年以上前のことですが、左腕にはまだその傷跡が残っています。なぜその馬が噛んだのかは覚えていません。当たり前ですが「なぜ噛んだのか」と馬に聞いても答えは返ってきません。
でも、馬の習性を知ることで「もしかして、こういう理由だったのかも」と馬側の気持ちに寄り添うことができます。それが次の事故を防ぎ、人と馬の良い関係につながると思っています。
今回は、馬と生活する一人として、施設の馬が噛んでしまった理由を考えて3つにまとめました。
「馬って噛むんだ、怖いな…」と距離を置いてしまうのではなく「そうか、こういう理由で噛んじゃうことがあるんだな」ということが少しでも伝わったらうれしいです。
■事故が起きた施設の馬はなぜ嚙んだのか?考えられる3つの理由
事故が起きた施設の馬は、なぜ噛んでしまったのでしょうか。
馬と生活している私の視点から、考えられる理由を3つにまとめました。
①機嫌が悪かった、または、遊んで欲しくてちょっかいを出した
②ニンジンと指の区別がつかなかった
③③ 指が馬の死角に入って、見えていなかった
どれも私の推測ではありますが、そう考えた理由をお話しします。
①機嫌が悪かった、または、遊んで欲しくてちょっかいを出した
馬が噛む理由は、怒りや痛みだけではありません。触られたくないとき、体調が悪いとき、縄張りを守りたいとき……さまざまな感情が「噛む」という行動に出ることがあります。
私が以前噛まれた時も、馬が触られたくない場所に触れてしまったことが原因だったのかな?と今は思っています。今回の事故でも、その時の馬の体調や気分が影響していた可能性は十分にあります。
最近、自分の馬を迎えに群れの中に入った時、別の馬に腕を噛まれました。でもその子の様子を見ると攻撃的な感じはまったくなく「私にもかまって!」「そのロープで遊びたい!」という、どちらかといえば甘えに近い行動に見えました。噛むといっても、怒りからとは限らないんです。
馬が「なぜ噛んだか」は、正直なところ馬にしかわかりません。でも、「噛むかもしれない」と頭の片隅に置いて接することが、何より大切なのだと思っています。
馬に近づく前に、まずその子の様子をよく観察してみましょう。耳が後ろに倒れていたり、尻尾をバタバタさせているときは機嫌が悪いサイン。そういうときは、無理に近づかずそっとしておくのが一番です。
②ニンジンと指の区別がつかなかった
馬は赤系の色を認識しにくい「二色型色覚」と言われ、「三色型色覚」の私たち人が「オレンジ色のニンジン」と「肌色の指」を見分けられていても、馬にはどちらも非常に似た色に見えている可能性が高いのです。
もしエサやり体験でニンジンを指先でつまんで与えていたとしたら、馬はニンジンと指先を識別できずに、一緒に噛んでしまったということも考えられます。

左:「三色型色覚」人の色の見え方 右:「二色型色覚」馬の色の見え方
Research Article | October 2001
Photopigment basis for dichromatic color vision in the horse
先日、ニンジンを使ったトレーニング中に、指ごと噛まれそうになったことがありました。馬は大好きなニンジンを目の前にすると、周りが見えなくなるほど集中してしまう。そのくらい、馬にとってニンジンは特別なごちそうなんだと思います。
エサをあげるときは、指先でつままずに手のひらを平らにして乗せるように渡すと安全です。馬の歯が指に触れにくくなります。
③ 指が「死角」に入って、見えていなかった
馬の視界は約350度と非常に広いのですが「自身の鼻先から足元」は死角で見えていません。人間でいえば、自分の顎や首が見えないのと同じ感覚です。
エサを鼻先に持っていくと、馬は匂いでそれが「食べ物だ」とは分かりますが、形や指の位置までは正確に把握できていないことがあります。
子供の小さな手が馬の死角に入り、見えずに噛んでしまった可能性は十分にあります。
エサを渡すときは、馬の鼻先ではなく少し横から差し出すようにすると、馬からもエサが見えやすくなります。手の小さい子どもは、直接手で渡さずに容器を使ってエサをあげると安心です。
■今回のまとめ
今回は、事故が起きてしまった原因として考えられる理由をお話ししました。
観光牧場の馬たちは人に慣れていますが、馬も感情を持つ動物です。昨日大丈夫だったから今日も大丈夫、とは言い切れません。私が愛馬を預けている厩舎のオーナーでさえ「今日○○は機嫌が悪いから噛んでくるわ、気を付けて」と言うことがあるほどです。
ですが、「馬が噛むことがある理由」を知っていれば、接し方を変えることができ、ケガや事故を防ぐための対策も考えられます。
今回の事故は起きて欲しくない事故ではありましたが、馬は噛むから怖い…と距離を置いてしまうのではなくて、「そういう理由があるんだな」と頭の片隅に入れておいて、より安全に馬とのふれあいを楽しんでもらえたら嬉しいです。
別記事では、今回の内容を踏まえた「馬のエサやり体験を安全に楽しむ3つの注意事項」をまとめています。
ぜひこちらも読んでみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
